映画「決戦は日曜日」見どころ〈ネタバレなし〉と感想〈ネタバレ〉

見どころ

独自評価 ★★★★☆(3.9)
あらすじと見どころ
衆議院議員の川島昌平が病に倒れ、川島の娘有美(宮沢りえが急遽父の地盤を引き継ぐことになるが、熱意はあるものの政治のことが全くわからず言動や行動がたびたび世間を騒がせる。そんな有美を、父の川島の頃から私設秘書として働く谷村(窪田正孝が振り回されながらも冷静にサポートしていく。
当選はほぼ確実となったところで思いもよらない展開へと。
政治の世界を分かりやすく、コメディタッチで描いている。政治に興味が湧いてくる。
有美さんと谷村たちのやり取りが面白い。
子供にも見せられる、家族で安心して見られる映画。

感想

この映画を見て、政治家の人達を見る目がちょっと変わったかも。
由美さん(宮沢りえ)は、お父さんの後継者として急遽地盤を継ぐことになったど素人の政治家だから、感覚的には一般人に近いと思う。差別発言や問題行動でたびたび炎上していたけど、嘘つくことの抵抗感とか、これまでの定例だからと間違ったことでも当たり前のように事を進めていく秘書や後援会などに対しておかしいと言える、こんな気持ちが大切だと思うけど、政治の世界って結局これが正しいことだと思ってもそれを実行することは難しいがんじがらめな世界なんだろうな…
議員秘書もみんな肝が据わっていてハプニング慣れしている。対応能力がすごすぎる。
政治を決めているのは議員ではなく議員秘書のように思えた。
この映画では、由美さんの気持ちに心が動いた秘書の谷村(窪田正孝が由美さんと共になんとか抗おうとして結果抗えなかったけど、最後は何がこれからやってくれるのではないかと期待できる終わり方だったから、この映画の中の政治の世界には少し期待を持てた。
実は切実な内容ではあるものの、しっかりとコメディタッチに描いていて、笑えるシーンもたくさんあって、展開も面白かったし、配役も良かったし、窪田くんのスーツ姿がとってもカッコ良く、良い映画だった。
子供に見せがたいシーンとかはないので、家族で見ても良いと思う。子供たちが政治について身近に思えるかもしれない。

映画「マスカレード・ナイト」見どころ〈ネタバレなし〉と感想〈ネタバレ〉

見どころ

独自評価 ★★★★☆(3.8)
あらすじと見どころ
東野圭吾の小説マスカレードシリーズの映画化。前作マスカレードホテルに続き舞台は山岸(長澤まさみがホテルマンとして働くホテルコルテシア東京。このホテルでまたしても事件がおこると密告状が届き、刑事の新田(木村拓哉)がホテルマンに扮し潜入捜査をする。今回は12月31日に行われるホテルのイベント「マスカレードナイト」に都内で数日前に起きた殺人事件の犯人が現れるという内容でパーティ参加者は500人。参加予定の怪しい人物が次々とチェックインしていく。イムリミットが迫る中新田山岸コンビが事件解決へ奮闘する。
豪華出演者と非日常的ホテルな空間。考察し放題。映画館で見たほうが豪華な雰囲気を味わえる。家族で楽しめるエンタメ作品という感じ。

感想

まず、冒頭のタンゴのシーン。パーマがかかったの色気ムンムンのキムタクが中村アンとタンゴを踊っている。。。
素敵なシーンなんだろうけど、大きいスクリーンのせいもあってか、初めの感想として…キムタク、老けたなぁ、、と思ってしまった。マスカレードホテルでもそうだけど、捜査に入るとホテルマンのように髪の毛を短くするから、早く髪切ったキムタクが始まって欲しかった。
とにかく登場人物が多いし、伏線も多いし、みんな犯人っぽく見えるし。
出演者も豪華。木村佳乃高岡早紀の同級生設定なんて、どっちも怪演女優だから犯人役あり得そうだし。
沢村一樹については、犯人役で出そうではあるもののコンシェルジュへのサービス要求がしつこすぎて逆にこれは犯人ではないなと思った。
結局、同系列のホテルマンだったから腑に落ちたけど、いくらお客様に要求されたとしても、普通あんなにホテルってサービスするか?!ってシーンがすごくあって、映画自体の内容よりも私はそっちの方がとっても気になってしまった。
田中みな実の風船の対応もあり得ないし、色々ちょっと現実的じゃないなって感じた。
これを見て実際にホテルに無理な要求したりわがままいったりする人増えるんじゃないかと心配になった。
それが気になっていたからか、犯人は全く最後までわからなかった。
麻生久美子は怪しかったけど、一度犯人じゃなさそうという流れになったから外していたし、終いにはホテルマンである石黒賢が犯人かも、とか思って観ていたし、キムタクが犯人であろう人とタンゴを踊っていた時も、女性だなとは思ったけど、中村アン?とか思ってしまったし、前作のマスカレードホテルでは松たか子が老婆の姿でホテルに来た時点でもうこれ犯人だろってすぐ分かってしまったから、今回は犯人が最後まで分からなかった点では満足。
でも最後の長澤まさみ高岡早紀の教会でのシーンだけど、あれは生きてるなっていうのはすぐわかってしまった。ここで時計が遅れていることがなんか意味出してくるなとすぐ繋がった。
私の感想としては、映画の内容や展開よりもホテルのここまでやるの?という過剰なサービスのあり得なさが気になってしまった。
たくさんの役者が出ていて豪華なんだけど、豪華ゆえに物足りなさを感じた。
でもいろいろ考察しながら大人から子供まで家族で楽しめる映画になっているし、エンタメとしては良いのではないかと思う。

映画「空白」見どころ〈ネタバレなし〉と感想〈ネタバレ〉

見どころ

独自評価 ★★★★☆(4.2)
あらすじと見どころ
ある日、スーパーで女子中学生の花音が万引きしようとしたところを店長の青柳(松坂桃李)が捕まえる。しかし花音は逃げ出してしまいそれを青柳が追いかけていく中、花音は車に轢かれてしまう。娘を亡くした父親添田は娘は万引きをしていないと訴え、娘をしにおいやったと青柳を責め、どんどん追い詰めていく。
シリアスな内容でリアリティな話で重いけど心にすごく刺さる。添田役の古田新太の演技と追い詰められていく青柳役の松坂桃李演技が見事。
子供でも見れるけど、車に轢かれるシーンはつらい。

感想

リアルに自分や周りの人にいつ起きるかわからないから、身につまされるというか、こうならないようにするためにはどうすべきだっただろうか、ということばかり考えてしまう。子供を理解すること、その子の特徴個性に対して無神経な物言いはしない、運転は気をつけ過ぎるくらい気をつけること、もし自分がお店の店長だったとして、もし万引きをみつけても安全に配慮し深追いしないこと、など。
車に跳ねられるシーンがリアルすぎて、衝撃だった。本当に。このシーンはきつい。胸が苦しくなる。
中学生の娘が、なんかもうかわいそうで…ずっとあと引く…万引きは良くないけど、完全にあの万引きはSOSだろうよ。担任の先生もなんか言い方が強くて繊細な子だったら心痛めると思った。お母さんにはもう新しい家族いるし、父親はあんなだし。心が壊れるのは必須という感じ。そしてあんな亡くなり方。。胸が痛む。。
あの父親は、ほんともう、嫌だ。娘が亡くなって悲しいのはもちろんわかるけど、周りのせいにしたくなるのもわかるけど、まず娘に対する態度がないわ。あんな威圧的な父親になど悩みはもちろん話せないし逆らう気すらなくしてしまいそう。また古田新太があの憎たらしくなる感じをうまく演じていてさらにムカついていた。なんでお母さんと暮らすことを選ばなかったのだろう。新しい家族がいたとしてもあの父親と2人で暮らすよりはマシだったのではと思う。
中学生の娘も可愛そうだったけど、いきなり飛び出してきた中学生を初めに跳ねてしまった女性も気の毒…
その女性の母親もかわいそう。葬儀のシーンで母親が古田新太と話すシーンがまた辛かった。あの母親の気持ちが伝わらなかったら古田新太もう救いようない。さすがに伝わったから良かったけれど。
あの善意の押し売りの寺島しのぶがいい人なんだけど、悪いけどうっとうしいというか。その辺の松坂桃李の演じ方が絶妙だったと思う。善意ってとこまでが善意なんだろうか、と考えさせられる。
松坂桃李もスーパーの店長だったたけで、たまたま万引きみつけただけで、人生が一変して、気の毒ではあるけど、やっぱ追いかけるときに、もしかして、かもしれない、を考えてなかったのは悪かった。小さい子供を育てたことがある人だったら、あんなに追いかけたら車に跳ねられるかもしれないということは想像がつく。相手はまだ中学生なんだし、あの対応は良くなかった。
この映画見てから車の運転はいつも以上に気をつけている。気をつけることで少しでも回避できる可能性があるのならやれることはやる。
映画としてはいい作品。配役もいいし心にも刺さる。でもかなり引きずる…見たあとのダメージがあるから、心が健康な時に見た方が良い。

映画「きのう何食べた?」見どころ〈ネタバレなし〉と感想〈ネタバレ〉

見どころ

独自評価 ★★★★☆(4.1)
あらすじと見どころ
同性カップルの日常を描いた物語。
漫画、テレビドラマからの映画化。
仕事よりプライベート重視の弁護士シロさん(西島秀俊と人当たりの良い美容師のケンジ(内野聖陽)は京都旅行へ。そこでシロさんからケンジに打ち明け話が…年齢的なことや両親家族のこと、同性カップルだからこその悩みにも直面するが、お互いを想う気持ちに心温まる映画。
たくさんでてくるおいしそうな料理の数々もこの映画の見どころ。
男女問わず、年齢問わず、子供でも安心して見ることができる平和な映画。
癒されたい時はこの映画を見ればいい。

感想

ほんとにいいカップル。前半はシロさんなんていい男なんだろうと思い、後半はケンジなんていい男なんだろ、と思った。
まず、京都旅行のシロさんのセレクトが最高。昼ごはんも宿も観光メニューも全て決めてある。しかもケンジが気になっていたところや喜ぶ場所をすべて把握してある。なんて素晴らしいんだろうか。
そして後半はケンジが健気でかわいい。自分の気持ちを素直に伝えたりシロさんの両親を思いやっている。よくできた彼氏。
2人とも、年齢のこともあって、何か隠しているような素振りがあるとすぐ病気なんじゃないかと勘繰ってしまい、もしかして死んでしまうんじゃないかと思い心底不安になる。男と女だったら結婚という形があるけど、同性だとそういった明確な形がないから余計不安になるのだろうと思う。
だからこそ、素直に気持ちを伝え合うことができる素敵なカップルで見ていて心が温まるし癒されるし無条件に応援したくなる。
年齢的に落ち着いた仲良し夫婦そのもの。
ケンジの金髪サングラス姿にときめいた表情のシロさんがかわいかった。
この話に出てくるもうひと組の同性カップルの小日向さん(山本耕史)とシルベーヌ(磯村勇斗はシロさんとケンジみたいな安定さはないけど、シルベーヌに小日向さんが振り回されている感じがいつも面白い。
このふた組のシーンは楽しくてずっと見てられる。
きのう何食べたといえば、料理シーン。映画でもとても勉強になった。佳代子さん(田中美佐子のレシピもシロさんのレシピもどちらも再現しやすそうなもので、難しい調味料も使わないし庶民向けでありがたい。
これを見るといつもおっくうだと思う料理作りもなんだかやる気がでてくる。
物語全般、派手さはないし考察することもないし、割と平坦な内容だけど、微笑ましくて穏やかな気持ちになれる。そして料理も教えてもらってやる気ももらえる、という全世代で見られる良い作品だと思う。

映画「鳩の撃退法」見どころ〈ネタバレなし〉と感想〈ネタバレ〉

見どころ

独自評価 ★★★★☆(3.7)
あらすじと見どころ
運転手として働く津田(藤原竜也は知り合いの古本屋の店主から大金を受け取る。しかしそれは偽札で、津田と繋がりのある一家3人の失踪事件とその偽札とが結びついていき、津田はどんどん事件に巻き込まれていく。そして裏社会のドン倉田(豊川悦司)にも追われることになる。
小説家でもある津田の小説の世界と現実とが混合し、フィクションかノンフィクションか、頭を整理しながらじっくりと観たほうがいい。

感想

途中まで現実の世界と小説の世界とが入り混じり頭が混乱する。前半で伏線のタネみたいなものがばーっと撒かれる。
時間軸が前後したり、視点も二つあり、ちょっと頭をしっかり働かせながら目を凝らして見ておかないといけない感じがある。
3万円というワードが場面場面で色んな使われ方をしていて、何で金額が一緒なんだろうか…たまたま?と頭の片隅で気にしながら見ていたら、この話は津田のフィクション小説の話ではなく、現在進行形の話であるということが判明する。そうすると、さっき撒かれた伏線のタネが急にあっさりと回収されはじめ、先程頭の片隅で気にしていたあの3万円は全て同じ3万円であると分かる!ここがかなりスッキリした。
そして登場人物もどんどん繋がっていって、1人からイコールで式がつながっていくというか、なんと表現したらよいかわからないけど、相関図を説明するかのような感じで話が進みだす。
そこから途端に分かりやすい物語になって、全てが分かったときはかなりスッキリしていく。
3万円も色々経由するけど、ピーターパンの本もまた色々経由し、だからここにあるのか、とか、秀吉が手を叩くのも何なんだろうかと思ってたら後から、ああそういうことね!となる。
ただ、関係性が分かるまではずっとモヤモヤする。
意味がわからないまま、まあまあ進むし。
前半頑張って見たら、中盤くらいからぐっと面白くなるという感じ。
鳩の撃退法というタイトルはなぜこれなのか謎。鳩が偽札を指しているのは分かったけど。それと、秀吉が妻と娘が乗った車でどこかへ急発進していくが、あの後どうなったから最後に秀吉が津田の店を訪れることができたのか、秀吉の娘はどうなったのだろうか、わからないまま。
小説の映画化なので、原作をどれくらい2時間の映画にまとめられたのかは気になる。
この映画、年齢制限なしとなっているけど、制限はなくとも指導のもとくらいはつけたほうが良いと思った。何もなしだからと思って子供と一緒に観れるような雰囲気だしてはダメだと思う。映画館なんてもっての外と言いたくなるような子供には不向きな男女シーンがある。
そもそも子供が見て内容も難しいし、子供にはわかりづらく、これは大人向けな映画だと言える。
この映画が面白かったかといえば、私はこういう展開の話は繋がった瞬間にスッキリするし、キャストも安定の藤原竜也で問題なく、風間くんの役どころもハマっていたと思うし楽しめたけど、意味がわからないモヤモヤした前半を過ごすのが苦手な人にとっては受け入れにくいと思った。

映画「そして、バトンは渡された」見どころ〈ネタバレなし〉感想〈ネタバレ〉

見どころ

独自評価 ★★★★☆(4.2)
あらすじと見どころ
ベストセラー小説の映画化。
4度苗字が変わった優子、現在は3人目の父森宮さん(田中圭と二人暮らし。
血の繋がりのない森宮と優子だが森宮は優子のことを大切に育てている。
そしてもう1人の登場人物、梨花石原さとみは自由奔放な女性で結婚相手の連れ子のみーたんを溺愛している。
梨花はみーたんの父(大森南朋)と離婚することになるが、血のつながりのないみーたんのことはそのまま引き取りシングルマザーとして育てていく。
生活は苦しいものの仲良く暮らしていた2人だったが、みーたんにピアノを習わせたいと思いたった梨花はそのために再婚を決意する。
2度目の結婚相手となった泉ヶ原さん(市村正親と3人で優雅で不自由のない暮らしをしていたある日、みーたんの前から梨花は突然姿を消してしまう…
優子の物語と梨花の物語が同時に進行していく中、それらがつながったとき、物語の伏線が回収され、感動へとつながる。
全世代に見て欲しい映画。温かいうえにストーリーの展開もうまくできていて面白い。

感想

人の善がたくさん詰まった作品で心が浄化される。
境遇環境だけ見れば優子は可哀想かもしれない。けど、優子をみんなが大切にしていて、そこに血の繋がりとかは関係なくて、梨花さんも3人の父親たちも優子のためにみんなが動いていく。なんだろうか、この持って生まれたものなのか、誰かが守りたくなる存在。そしてそんな優子と出会うことで皆んなも自分の存在意義を見出せる。
梨花さんがとにかく魅力的で見た目はちょっと派手だけど子育てを懸命にやっている。映画でも現実でもこの流れから虐待へと話が進みがちだけど、この映画は正反対。みーたんに優しく愛情深い。泉ヶ原さんの家にみーたんを一時期置いていってしまうけど、それもちゃんと理由があって、いつも梨花さんなりに最大の愛情をみーたんにかけている。
また、みーたんも、梨花さんが再婚するたびにすぐ新しいパパに順応できる。梨花さんを信頼しているからこそなのだと思う。これがみーたんの愛される理由なのかも。
ストーリー展開も面白い。みーたんと優子が別なのか同じなのか、梨花さんが現代の話なのか過去なのかも初めの方はわからない。でもきっとみーたんが優子で梨花とみーたんのシーンは過去の話しなんだろうなぁと思いながら見ていたものの、確証はなかった。
思った通りの展開だったけど、みーたん=優子の継なげかたがスムーズで過去と現在での伏線の回収も無理なく分かりやすい。
そして、すごすぎて感心したのがピアノのシーン。早瀬くんが教室でピアノを弾くシーンにはびっくりして鳥肌が立った。ピアノの音がとにかくダイナミックで心にドーンと入ってきた。あのピアノを聞いた優子も心を奪われたようにぼーっとしていたが、私も優子と同じ気持ちになった。アンパンマンの曲を弾くシーンも力強くて繊細で、カッコよかった。あのシーンは是非スクリーンで見てほしい。
現在のシーンでところどころにリカさんの存在を思わせるようなところがあるが、髪の毛を隠しているように見えたので、もしかしたらと思ったが、もしかしていた。
リカさんもすごいけど、泉ヶ原さんもすごくて、森宮さんもすごい。この3人は優子とは一切血縁関係はない。それなのにこんなに愛を注ぐ姿に心が温まった。
この映画は内容も良いし、キャストも良いし、大人も子供も見て共感するところもあるし、タイトルと映画の内容が腑に落ちる感じが見終わった後清々しいし、誰にでもおすすめしたくなる映画。
もう一度見て、もっと泣く、と銘打っているが、私は、もう一度見たら最初っから泣く。

映画「護られなかった者たちへ」見どころ〈ネタバレなし〉感想〈ネタバレ〉

見どころ

独自評価 ★★★★☆(4.4)
あらすじと見どころ
宮城県で2つの殺人事件が起こる。どちらも身動きが取れない状況に縛られ放置され餓死するというもの。被害者は2人とも東日本大震災の時に生活保護の担当をしていた。
事件を追っていく刑事笘篠(阿部寛)は、過去の事件から服役したばかりの利根(佐藤健を容疑者としてマークする。そして利根の過去を探っていく。
社会性メッセージもあり、ミステリーもあり、見応えのある映画。
生活保護の仕組み、オーバーワーク、東日本大震災
子供から大人まで見て考えることができる。
キャストも良い。

感想

この映画の完成度はものすごく高いと思う。
ミステリー性も良いし、内容も奥が深い。
展開も良いしメッセージ性もある。とても良質な映画。
護られなかった者たち、とは誰に向けてのことだろうか、映画の終盤にこのタイトルの意味がわかる。だから守るじゃなくて護るなのか!と。
映画のタイトルへと話がうまく繋がっていき、そして被害者の三雲(永山瑛太)、城之内(緒方直人)の身に起きたこと、利根(佐藤健)と笘篠(阿部寛が最初に避難所の階段でぶつかったシーンがあったがこの2人がもうこの時すでに運命が絡まっていると分かること、わからなかったことを終盤に全部一気に見せるその見せ方というか、ストーリー展開がよかった。作り方がすごく好きだった。
地震は怪物、抗えないものにみんな心をえぐられてヒリヒリしているように見えた。
そして、生活保護についても何が正しいのか、悩むしわからないし、考えさせられる。
事件の被害者となった三雲と城之内が利根に言った原理原則とか、確かにあれは無神経な発言だった。でもあそこまで追い詰められていたのも震災での過労が生み出した心理状態なんだろうと思うと、ただ必死に仕事してその結果がこれか、、と悲しくなる。人格者であり、真面目な人物があんな…やられた方も可愛そう。
そしてそれを泣きながらやってるカンちゃん(清原伽耶を見た時は辛かった。これまでのカンちゃんの人生を見れば恨む気持ちも理解できるから可愛そう。
結局はみんな可愛そう。
生活保護の仕組みについて、この映画でよく分かる。明らかに助けが必要なのに申請することにや受給してもらうことに抵抗がある人もいれば、悪気もなく不正受給している人、生活保護でも子供を塾に行かせたいから収入を申告しない人、生活保護受給者といっても一括りではない。申請を受け取る側の人間も、必要な人にちゃんと届くようにと奮闘するカンちゃんのような熱意のある職員さんもいればこの仕事に意味あるのかとわからなくなりながらこなしていく職員さんもいる。
ただカンちゃんの言う通り、困っている人は声を上げべき。不埒なものよりも大きな声で上げるべき。上げなければ気づいてもらえもしない。カンちゃんが護られなかった者たちへ残していたSNSのシーンにこの映画の訴えたいメッセージが込められていてとても心に刺さった。
映画の内容同様、キャストも良かった。
容疑者も刑事も犯人も被害者も、みんな本当に良かった。清原伽耶はまだ若いのに落ち着いた貫禄のある芝居をする若手の中でも一味違ったオーラがあるなと思う。原作では男の子のようだけど、そこを変更してまでも清原伽耶を起用したのは納得できる。
重くて悲しい内容ではあるけど、年齢性別問わず(小さい子供は遺体発見のところは怖いかもしれないけど)震災のこと、生活保護受給者のこと、オーバーワークのこと、色んな人の気持ちを感じ取れる映画だと思う。